あゆみクリニック 女医 宮沢あゆみ 女性外来 婦人科 千代田区 完全予約制

医師「宮沢あゆみ」による病気の話。「心身症」

医師 宮沢あゆみのコラム「心身症」

これまで、「空の巣症候群」「濡れ落ち葉」「介護の負担」など、更年期によくみられる症例を提示して、その解決策を具体的に考えてきた。
今回からは、発症の「原因」を見極めるのが難しく、それゆえに誤った診断を下されることも多い代表的な症例をご紹介しよう。
 

<症例4>
女性初の管理職になり1年が経過した。リストラで部下が減り、やめた部下の仕事まで自分で抱え込んでしまい、多忙になったが、責任ある立場についたのだから当然と思い、自分では特に苦痛とは感じていない。

最近、胃がシクシク痛む。消化器内科で胃カメラを受けたが、軽い胃炎で心配ないと言われた。頭痛とめまいもするので、脳神経科で脳のCTを撮ったが問題はなかった。耳鼻科も受診したが特に異常はないと言われた。

これ以上、ドクターショッピングをしても医療費がかさむばかりだ。これも更年期のせいなのだろうか?

 
胃痛→消化器内科
頭痛、めまい→脳神経科、耳鼻科

症状ごとに思い当たる診療科を受診しても、「大した問題はない」と言われてしまった場合は、どうしたらよいのだろうか?

何らかの「身体的な不具合」の発生や経過に、「心理的な因子」が密接に関与している疾患がある。「病は気から」とはよく言われるが、身体疾患のなかで、その発症や経過に心理社会的な因子が密接に関与している病態を総称して「心身症」と定義している。

以下に、心身症の要素を強く持つ身体疾患の代表的なものを列挙しよう。

消化器系     :胃潰瘍、神経性胃炎、過敏性腸症候群
呼吸器系     :気管支喘息、過呼吸性症候群
心臓血管系    :不整脈、狭心症、高血圧
脳神経系     :偏頭痛、緊張性頭痛
婦人科      :月経不順、機能性子宮出血
泌尿器科     :夜尿症、過敏性膀胱
皮膚科      :蕁麻疹、円形脱毛症 

心身症は、持続的な緊張やストレスにさらされることで、身体機能や免疫機能などが影響を受けて発症すると考えられている。

心身症になりやすい人の性格傾向に、「失感情症(alexithymia)」と呼ばれるタイプがある。このタイプは感情表現が上手くできず、自分のストレスや不満を認識しにくいという特徴をもつ。そのような人の内面に溜め込まれていたストレスが、ある時を境に身体の不調となって現われるのである。

心身症になりやすい人は、体調を無視して過労に陥りやすいなど、自分の身体の変化にも気づきにくいとして、「失体感症(alexisomia)」という概念を提唱する専門家もいる。診断が遅れたり、誤った診断を下されやすいのは、本人に病識が乏しいことも一因となっている。

また、真面目で人当たりが良く、環境に適応を示すタイプも、実はストレスを溜め込みやすく、心身症になりやすいといわれている。俗にいう「優等生タイプ」も危険なのである。ストレスは適度に認識し、適度に発散する必要があるということだ。

心身症の場合、最初は身体の不具合を自覚して、まずは内科を受診する人がほとんどである。よって、最初に診察に当たる医師が、身体の不調の背後にストレスが密接に関与していないか注意深く見極めなければならない。

何しろ本人はあまりストレスを自覚していないのだから、問診を通して本人の性格傾向を把握するとともに、生活環境や職場環境を知ることがとても大事になる。

心身症は身体的な検査で異常を認めることも多いが、その発症や症状の転帰には心理的因子が影響しているため、身体的な治療と平行して心理面の治療やケアをしていくことが欠かせない。心理面のケアをしないと、いったんは完治しても再発しやすい。心理的な原因をさぐり、それを解決することが再発の予防にもつながるのである。その治療に当たるのは心療内科である。

更年期に心身の不調を感じて、どの科を受診したらよいか迷った場合には、ドクターショッピングを繰り返す前に、「女性総合外来」や「更年期外来」などを掲げている医院や病院を受診して、“不具合の交通整理”をしてもらうことをお勧めしたい。

今では「総合診療科」などを掲げている病院も多くなった。先入観をもって「○○科」と決めつけずに、まずは包括的な診療をしている科の門を叩いて、そこから適切な診療科へ紹介してもらうといいだろう。

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