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医師「宮沢あゆみ」による病気の話。「HRTの投与方法」

医師 宮沢あゆみのコラム「HRTの投与方法」

更年期障害の治療には、個人の症状や程度に応じて様々な薬が用いられる。しかし、明らかに女性ホルモンであるエストロゲンの減少による不快症状が強い場合には、ホルモン補充療法(Hormone Replacement Therapy=HRT)が第一選択肢となる。

そして、ホルモン補充療法(HRT)で用いる薬にも、経口剤、膣剤、貼布剤など複数の選択肢がある。このため、患者の年齢や不快症状に応じて、最も適した薬の投与方法や投与経路を選択することができる。いわば、オーダーメードのきめ細かな治療が可能なのだ。
以下に、HRTでよく用いられる薬の特徴を解説しておこう。

 
経口剤
最も頻繁に用いられるのは経口剤である。
経口剤のメリットは、口に入れて飲み込むだけなので簡便で、薬の増量や減量が簡単にできることだ。経口剤は種類も豊富なので、体調に応じてきめ細かな調整ができる。デメリットとしては、胃腸や肝臓の弱い人には不向きな点があげられる。

<連続投与か休薬投与か>
経口投与には、連続投与と休薬(薬を飲まない)期間をもうける方法とがある。
連続投与の場合は、女性ホルモンであるエストロゲン剤(卵胞ホルモン)とプロゲステロン剤(黄体ホルモン)を連続して服用する。休薬期間をもうける場合は、最初にエストロゲン剤を単独で服用し、月の後半にプロゲステロン剤を併用する。例えば、エストロゲン剤を21日間服用し、後半の12日間はプロゲステロン剤を併用して、7日間休薬するといった具合である。
後者の方が本来の女性ホルモンの分泌に近い投与法だが、休薬期間に月経様の出血をみるため、閉経前の女性に用いることが多い。出血を望まない女性や閉経後の女性には、出血がおこらない連続投与を選択する。

<エストロゲン単独かプロゲステロン併用か>
エストロゲン剤の単独投与だと不正出血をみたり、長期投与した場合に子宮体がんのリスクが高まることから、通常はプロゲステロン剤を併用する。手術で子宮を摘出した場合には、これらのリスクがないためエストロゲン剤を単独で服用する。

 
膣剤
膣に直接、挿入する錠剤である。
膣炎や膣萎縮の予防、膣の潤いが失われたことによる性交痛などに効果がある。全身症状がなく膣の局所的な悩みであれば、膣剤で十分である。
デメリットは、簡便さに欠け、慣れるまで挿入するのに手間がかかることだ。副作用として、膣分泌物が増えたり、性器が腫れたりすることがある。

 
貼付剤
貼付剤(パッチ)は、通常、下腹部か背部の皮膚に一枚貼布し、週に2回ほど貼り替える。
貼付剤に含まれる経皮エストロゲンは、皮膚から吸収され、肝臓を通過しないで直接大循環に入るため、安定した血中濃度が得られ、少量で効果が持続する。経口剤と比べて中性脂肪の上昇を認めず、血栓症のリスクが増えないというメリットもある。動脈硬化の発症には血管の炎症が密接に関与しているが、経皮エストロゲンには血管の炎症を抑制する作用があるため、心筋梗塞など動脈硬化が原因でおこる疾患にも有用であることがわかってきた。

デメリットは、使用量のきめ細かな調節が難しいことである。副作用として、貼布部位の皮膚に痒みやかぶれがみられることがあるので、定期的に貼る位置を変える必要がある。敏感肌の人や貼布部位に皮膚疾患がある人には不向きである。

 
ジェル剤
ジェル剤は、直接、皮膚に塗布して使用する。保険が効かず自費となるものもある。

 
このように、HRTで用いられる経口剤、膣剤、貼布剤にはそれぞれにメリットとデメリットがあるため、年齢や不快症状によって薬の投与方法や投与経路を使い分けている。その人にピッタリと合った治療法さえ見つかれば、霧が晴れたように不快症状が消失していくのが、更年期治療の醍醐味といえよう。

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