医師 宮沢あゆみのコラム「空の巣症候群」
<症例1>
一人息子が地方の会社に就職し、あっさりと巣立ってしまった。
最近、息子のアルバムを眺めては涙ぐんでいる。「死にたい」、などと思うことすらある。気分が落ち込み、時々精神安定剤を服用している。そろそろ更年期なのだろうか?
一身に愛情を注いだ子供が自立して、自分の助けを必要としなくなった寂しさから精神的に不安定になり、うつ症状に陥ることがある。子育て中心に生きてきた女性が陥りやすく、これを「空の巣症候群」と呼んでいる。
子供はいつか巣立つもの。今まで子供のために使っていた時間を、今度は自分のために使ってみよう。自分のために時間を使うことに慣れていない主婦は、自分自身が何をしたいのかすらわからないこともあるだろう。
そんな時は自分が興味をもっている事柄、これからやってみたい事柄を、1つ1つ紙に書きあげてみよう。意外と頭の中が整理されてくるはずだ。昔、熱中した趣味でもいい。一日一回でもいいから、心が浮き立つような楽しいことに時間を使ってみよう。
自分を必要としてくれる存在が必要ならば、ペットを飼うことをお勧めする。「アニマルセラピー」という言葉があるとおり、動物と触れ合うことは人の心を癒し、ストレスを軽減してくれる。自分の助けなしには生きていけない愛おしい存在が傍にいるだけで、生きる張り合いを取り戻すこともある。
気分が落ち込みやすい人には運動がおすすめである。適度な運動は気分転換になる。早歩きや自転車、水泳などの有酸素運動は健康にいいので、是非、取り入れてもらいたい。運動が苦手な人は、最初は散歩でもいいし、プールの中を歩くだけでもいい。とにかく最初の一歩を踏み出してみよう。
地域のサークルに入ったり、スポーツクラブに参加するのもいいだろう。そこで共通の趣味をもつ友達ができれば、だんだんと交友関係や行動範囲も広がっていく。
夢中になれることがあれば、落ち込んだり、憂うつになっている暇はない。一日が心地よい疲れとともに終わるならば、いつの間にか不眠ともお別れしているに違いない。
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