医師 宮沢あゆみのコラム「加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)」
更年期障害は女性に特有のものではない。
最近では男性にも更年期障害があることが認知されるようになってきた。
そのメカニズムは女性と同様で、精巣から分泌される男性ホルモン(テストステロン)が減少することによって様々な心身の不調が現われる。全身倦怠感、不眠、性欲減退、勃起不全(ED)などの身体的症状のほか、気力や集中力の低下、イライラ、抑うつ状態などの精神的症状が出現する。
これらを総称して加齢男性性腺機能低下症候群(Late-Onset Hypogonadism=LOH症候群)と呼んでいる。
男性の更年期障害の見極めは、女性と比べると難しい。
なぜならば、女性と違って、テストステロンの減少は比較的に緩やかで、20代をピークとして加齢とともにゆっくりと低下していくため、症状の現われ方がわかりづらいからである。加えて、女性には「閉経」という明確な体の変化が存在するが、男性にはそれがない。
特に、50歳前後の働き盛りの年齢は、職場では責任ある立場について疲労が蓄積し、家庭では夫婦関係がギクシャクしたり、親の介護、将来に対する不安などでストレスが溜まりやすい。このため、心身の不調を、単に過労やストレスによるものだと思い込んで、やり過ごしてしまうことがほとんどなのである。
しかしながら、活力のホルモンであるテストステロンの低下は、男性のバイタル(生命力)に大きな影響を与えている。中高年男性のうつ病による自殺が増加している背景には、かなりの割合でLOW症候群が潜んでいるという指摘もある。
症状が明確に現われず、本人の自覚も乏しいだけに、実は男性の更年期障害の方がサインを見逃すと厄介なのである。
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