医師 宮沢あゆみのコラム「高血圧とエストロゲン」
女性の高血圧は更年期を境に急増する。統計によれば、少し高めという予備軍まで含めると、40代では3人に1人、50代では2人に1人が高血圧であるという。
卵巣から分泌される女性ホルモンであるエストロゲンには、血管をしなやかにして拡張させる働きがある。このため、更年期に入ってエストロゲンの分泌が減少すると、血管の柔軟性が低下して、血圧が上がりやすくなるのである。
また、更年期の高血圧には、自律神経の乱れが大いに影響している。女性ホルモンと自律神経の最高司令室は、ともに脳の視床下部にあるため、更年期には女性ホルモンのバランスの乱れの影響を受けて、自律神経のバランスまで崩れてしまい、血圧のコントロールが不安定になるのである。
自律神経とは、自分の意思とは関係なく臓器や器官を動かし、血圧や代謝など体内の様々な調整をつかさどる神経で、アクセル役の交感神経とブレーキ役の副交感神経から成り立っている。
交感神経が優位になると、基礎代謝が亢進し、血圧が上昇して、体は戦闘モードに入る。外敵やストレスに対して、心拍数や血圧を上げて身体を守ろうと身構えるのである。よって、更年期には余計なストレスをためないことが大切である。
更年期高血圧の特徴は、血圧が不安定で変動しやすいことだ。常に高いのではなく、不安やストレスがきっかけで急にポーンと高くなったと思うと急降下するなど、乱高下が激しい。
こうした不安定な状態は、更年期を過ぎると次第に治まってくるが、高止まりのままで本格的な高血圧へ移行することもあるので注意が必要だ。
高血圧は動脈硬化を促し、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高める。偏った食生活、運動不足による肥満、喫煙なども血管の柔軟性を奪い、高血圧を招く原因となる。
更年期に入ったら、塩分を控え目にしたバランスの良い食事を心がけ、適度に運動をするなど、生活全般を見直していこう。