あゆみクリニック 女医 宮沢あゆみ 女性外来 婦人科 千代田区 完全予約制

医師「宮沢あゆみ」による病気の話。「膣分泌物は情報の宝庫 <膣トリコモナス>」

医師 宮沢あゆみのコラム「膣分泌物は情報の宝庫 <膣トリコモナス>」

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<症例3>
23歳の独身女性。青い顔をしてクリニックを訪れた。

「最近、膣に痛みがあってヒリヒリします。黄色い泡状のおりものが下着について、悪臭がするんです」

おりものとは膣から出る分泌物のことである。女性の場合、性感染症の兆候はおりものの異常から発見されることが非常に多い。
「それでは、診てみましょう」

診察台に上がってもらい、外陰部を見ると、悪臭のする黄色い泡沫状の分泌物が膣の外まで噴きだしている。クスコ(膣鏡)で膣内を見ると、赤く変色して、子宮頚部にも点状の出血班が認められた。

「あなたの病気は膣トリコモナスです。膣トリコモナスというのは、性交渉によってトリコモナス原虫に感染しておきる病気ですが、何か心当たりはありますか?」

「実は、1か月ほど前に、ナイトクラブで知り合った身元のはっきりしない外国人男性と意気投合して、はずみで、その・・一夜の関係をもってしまい・・・それ以来、おりものの感じが変なのです。最初は膣にかゆみがあったのですが、だんだん痛くなってきて、今ではヒリヒリします。膣のなかに虫がいるのですか?」

「そうです。トリコモナス原虫という肉眼では確認できないほど小さな虫が、あなたの膣に入り込んで炎症をおこしているのです。炎症による充血で膣内が赤くなっていました。ピリピリした刺激を感じて痛むのもそのためです」

分泌物を顕微鏡で調べた結果、やはりクラミジア原虫がみつかった。
「膣トリコモナスの治療には抗原虫薬を使います。あなたの場合は症状が悪化していますので、内服薬と膣錠を併用して治療しましょう。これから内服薬の飲み方、膣錠の使い方を説明しますので、しっかりとメモしてくださいね」
「わかりました」

こうして、私は彼女に内服薬と膣錠を処方した。

 
2週間後、彼女は再度、来院した。
「先生、泡状のおりものがなくなり、においも消えました」
膣鏡で膣内を見ると発赤もおさまり、泡沫状の分泌物もなくなっている。
「どうやら治ったようですね」

「先生はおりものを見ただけで診断がつくのですか?」
「トリコモナスは、悪臭のする黄色い泡沫状の分泌物が特徴的なのです」

「なるほど。これからはおりものを注意して観察するようにしようっと」
「それよりもまず、無防備な性交渉をしないことです。そのうえで、性感染症に対するきちんとした知識を身につけてくださいね」

 
膣分泌物には膣壁の細胞や、子宮頚管からの粘液、皮脂腺や汗腺からの分泌物などが混じり合っていて、色々な情報を発信している。

性感染症の場合には、膣分泌物にそれぞれ特徴的な色や性状があるので、分泌物を見ただけで診断がつくことも多い。

膣トリコモナスの場合は、悪臭のする黄色い泡沫状の分泌物が特徴的だ。膣カンジダの場合には、白いポロポロとしたチーズ糟状の分泌物が典型的で、悪化すると黄緑色になることもある。

クラミジアや淋病の場合には、黄色い膿のような分泌物が増える。緑色の分泌物の場合には、名前の由来どおり緑膿菌や緑色連鎖球菌が原因である可能性が高い。

また、強烈な悪臭がする場合には、酸素のない条件下で生育する嫌気性菌が原因であることが多い。

外陰部に分泌物を付着させて放置していると、かゆみや痛みの原因となり、炎症をおこすこともある。女性の場合、小陰唇の裏をきれいに洗えていない人が多く、小陰唇に膿がたまって腫れるケースが多い。

入浴時には皮膚のpHに近い弱酸性の洗浄液を泡立てて、外陰部を泡でくるむようにやさしく洗おう。特に洗い残しの多い小陰唇の裏は丁寧に洗い、常に清潔にしていただきたい。外陰部を清潔にするたけで、かゆみや痛みがなくなることも多いのだ。

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カテゴリー: 病気の話, 第2回「性感染症の治療はカップルで!」 
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