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医師「宮沢あゆみ」による病気の話。「カップルで性感染症検査を受けよう」

医師 宮沢あゆみのコラム「カップルで性感染症検査を受けよう」

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性感染症(STD=Sexually transmitted disease)の予防法は、何よりも不特定多数との性交渉を避けることである。交渉する相手の数が多くなればなるほど、性感染症にかかるリスクも高くなるからだ。

ただし、特定のパートナーとだけ交渉していれば絶対に性感染症にかからないかというと、そうでもない。なぜなら、現在のあなたのパートナーが過去につき合った相手のなかに、性感染症にかかっている人がいたかもしれないからだ。

また、あなたのパートナーが必ずしもあなた一筋とは限らない。あなたのパートナーが1度でも風俗などに出入りすれば、風俗嬢が相手をしたお客すべてと間接的に交渉をもったのも同然となり、あなたが性感染症にかかるリスクは無限に広がってしまうのだ。

だんだん背筋が寒くなってきたのではないだろうか?

 
そこで、一番確実な予防法を伝授しよう。はじめてつき合う相手とは、互いに医療機関で性感染症の検査を受けて、お互いに病気にかかっていないことを確認したうえで性交渉をもつことである。

初回はこれでOKだ。しかし、その後は、あなたのパートナーが必ずしもあなた一筋であるとは限らないことを考えて、性交渉の際は必ず行為の最初からコンドームを使用する習慣をつけよう。「そこまでパートナーを疑うのは失礼」ですか? そう考える方には「転ばぬ先の杖」という言葉を贈ろう。

不幸にして性感染症にかかってしまった場合は、これまでに自分が性的接触をもった相手を可能な限り探索して、医療機関で検査を受けるように進言してまわろう。いち早く気づいた人間が手を打ち、感染の連鎖を断ち切ることが、性感染症の蔓延を防ぐために重要なことだからだ。

 
また、あなたが妊娠を望む場合にも、子づくりを始める前に、再度、医療機関で性感染症の検査を受けることをお勧めしたい。性感染症に気づかずに妊娠してしまった場合、母子感染をおこして、胎児や新生児に重大な影響を与えかねないからだ。

たとえば、クラミジア感染を知らずに出産すれば、新生児が結膜炎や肺炎をおこす可能性がある。出産時に性器ヘルペスが発症していれば、新生児が産道感染をおこす可能性があり、帝王切開を選択せざるを得ないなど、出産方法に制約がかかる場合もある。

また、妊娠後に性感染症が発覚した場合には、胎児に薬剤が与える催奇形性などのリスクを念頭におきながら治療をしなければならない。妊娠中は禁忌(使用禁止)となっている薬も多いため、薬剤の選定や投与の時期が制限されることもある。

つまり、妊娠前に性感染症にかかっていないことを確認しておくに越したことはないのだ。「何度も性感染症の検査を受けるのは面倒」ですか? そのような方には「備えあれば憂いなし」という言葉を贈ろう。

 
ちなみに、妊娠初期の妊婦健診において、性感染症検査は必須項目となっている。妊婦に性感染症がみつかったら、医療関係者は胎児や新生児に影響が出ないように速やかに対策を講じる責任があるからだ。

例えば、妊娠中にHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染していることがわかれば、抗HIV薬を投与することで母子感染のリスクを減らすことができる。B型肝炎ウイルス(HBV)に感染していることがわかれば、新生児にHBVに対する抗体を含む高力価HBsヒト免疫グロブリン(HBIG)やB型肝炎ワクチン(HBワクチン)を接種することで母子感染を防ぐことができる。

 
いまや性感染症は特定の人がかかる特別な病気ではない。性生活をもつ人であれば誰がかかっても不思議ではない身近な問題なのである。特に女性は妊娠、出産という可能性があるのだから、自分と未来の子供の命を守るためにも慎重に行動しよう。

「転ばぬ先の杖」「備えあれば憂いなし」この言葉を肝に銘じて、行動を起こす前に熟慮していただきたい。
 

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