あゆみクリニック 女医 宮沢あゆみ 女性外来 婦人科 千代田区 完全予約制

医師「宮沢あゆみ」による病気の話。「手指もきれいに洗おう <膀胱炎>」

医師 宮沢あゆみのコラム「手指もきれいに洗おう <膀胱炎>」

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<症例6>
32歳の女性が外来を受診した。
シックなスーツが似合う、いかにもキャリアウーマンといった趣きである。

「3日前から頻尿感があって、すぐにトイレに行きたくなるのに、排尿した後も残尿感があるんです。昨日から、排尿時に痛むようになって、今朝は血尿が出たため、我慢の限界を感じて来院しました」

「ずいぶん我慢して、膀胱炎をこじらせてしまったようですね。尿がワインレッドになっています。膀胱炎をこじらせると血尿が出ることがあるんですよ。最近、トイレを長時間、我慢していたことはありませんか?」

「1度だけ長時間の会議に出て、なかなかトイレに立つことができなかったことがありました。それ以外は、比較的自由な外勤勤務なので、トイレを我慢することはあまりないです」

「水分の摂取が足りないと膀胱炎になることもありますよ。外勤勤務ですと、よく汗をかくのに水分をとり足りないということはありませんか?人間は発汗以外でも、不感蒸泄といって、呼気や皮膚などから1日に1ℓ前後の水分を蒸散しているので、咽喉が乾いたなと感じる前に水分補給をした方がいいのです」
「ペットボトルは常に持ち歩いていますし、水分は意識してよくとる方だと思います」

「そうですか・・・。では、話は変わりますが、現在、性交渉のパートナーはいらっしゃいますか?」
「ハイ。結婚を前提におつきあいしている男性がいます」

「彼とは最近、性交渉をもちましたか?」
「4日前にありました」

「膀胱炎の症状が出たのは、その翌日ですね」
「そう言われればそうですね。でも、コンドームもつけて避妊や性感染症には気をつかっていました」

「性交渉の時に、彼が指であなたの性器を触ったりしませんでしたか?」
「ハイ・・そういうことはありました」

「多分、その時に彼の指先についていた雑菌が尿道口から入って、膀胱炎をおこしたのだと思いますよ」
「彼の指先の雑菌が、私の体のなかに入ったのですか?」

「そうです。女性の尿道は短いので、性交渉の時に不衛生な手指で性器を触られると、細菌が入りやすいのです。細菌が膣口から侵入すれば膣炎をおこしますし、尿道口から侵入すれば、上行性に尿道炎や膀胱炎をおこします。放置しておくと腎盂腎炎になって発熱することもあるのですよ」
「コンドームを使っているから安心だと思っていたのです。まさか指先から感染するとは想像もしていませんでした」

「指先には雑菌が数多く付着していますので、不衛生な手指で触られると、指先の雑菌があなたの体に入ってきてしまうのです。ですから、性交渉の前には性器だけでなく、手指も清潔に洗ってもらう必要があります」
「勉強になりました。これからは気をつけてもらいます」

 
性交渉の直後に、尿道、膀胱、腎臓などに尿路感染症をおこして外来を訪れる女性は後を絶たない。

性感染症の予防はコンドームで十分と考え、手指から雑菌が侵入する危険性については、ストンと頭から抜け落ちているのだ。間違っても、不潔な手で尿道口を触らせたり、膣に指を入れさせてはいけない。

膀胱炎の原因を性交渉と結びつけて考える女性は非常に少ないが、私の経験では、女性が膀胱炎にかかる原因の約8割は、性交渉時のパートナーの手指からの感染である。よって膣炎も併発していることが多い。

女性は尿道が短いため、男性より膀胱炎にかかりやすい。旅客機の客室乗務員など、頻繁にトイレに行くことのできない職種の人は、トイレに行く回数を減らすために、普段から水分摂取を控えがちなので、特に膀胱炎になりやすい。

尿が膀胱に長く留まっている状態は雑菌の繁殖を促しているようなものである。水分を十分にとって尿をつくり排尿する。この繰り返しがきちんと行われることで雑菌が速やかに体外へ排出され、膀胱炎の予防につながるのだ。

水分は十分に摂取して、トイレはくれぐれも我慢しないようにしよう。

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