あゆみクリニック 女医 宮沢あゆみ 女性外来 婦人科 千代田区 完全予約制

医師「宮沢あゆみ」による病気の話。「子宮脱」

医師 宮沢あゆみのコラム「子宮脱」

1.子宮脱とは
骨盤のなかにある子宮、膀胱、直腸などの臓器は、骨盤の底にある筋肉、筋膜、靭帯などによってハンモックのように支えられている。これらは恥骨から尾骨まで張り巡らされたインナーマッスルの集まりで、「骨盤底筋群」と総称される。

閉経によってエストロゲンの分泌が低下し、加齢も加わって骨盤底筋群の働きが弱ると、これまで支えていた臓器が重力の関係で徐々に下がっていき、やがて膣のなかに落ちて、膣口から外に飛び出すようになる。これを「骨盤臓器脱」という。

子宮が膣口から脱出した場合を「子宮脱」といい、軽度の落下はあっても子宮が膣内にとどまっている場合を「子宮下垂」という。子宮口が膣口付近で上下していて、いきんで腹圧がかかった時だけ脱出することもある。子宮が丸ごと膣外に飛び出した場合は「完全子宮脱」という。

子宮脱の場合、膀胱脱(膀胱瘤)が同時におきることも多い。膀胱瘤とは、膀胱を支える靭帯などがゆるんで、下垂した膀胱が子宮側に傾き、膣壁内に瘤のように突き出たものだ。

分娩回数が多かったり、巨大児を生んだ女性は、分娩した時点ですでに骨盤底筋群がゆるんで子宮下垂になっていることがある。内蔵脂肪の多い人や便秘がちの人、常日頃、重い荷物を持っている人も、子宮下垂から子宮脱に移行しやすいので気をつけよう。

 
2.骨盤底筋群を鍛える体操
子宮下垂に気づいたら、骨盤底筋群を鍛える体操をしてみよう。

まず、あおむけになって膝を立て、全身の力を抜く。次に、尿道、膣、肛門まわりの筋肉をギュッと締めて、5秒経ったら力を抜く。この動作を何度か繰り返してみよう。これは座っても、立ってもできる動作なので、慣れてきたら、テレビを見ている時でも、電車に乗っている時でも、日常生活のなかで繰り返しやってみるといいだろう。

体全体の力を抜いて、骨盤底のところだけギュッと縮めて持ち上げる要領だ。人に知られず、どこにいてもできる体操なので、根気強く続けてみよう。

 
3.治療方法
子宮下垂の場合には、膣からリング式ペッサリーを挿入することによって、子宮の位置を元に戻すことができる。

リングの穴の部分に子宮膣部が入るようにして膣内に固定する。膣のサイズにぴったり合ったペッサリーを使わないと違和感を覚えることがあるので、婦人科で相談してみよう。ペッサリーは定期的に新しいものに交換しないと感染の原因になるので、交換は医師の指示に従おう。

子宮脱が悪化した場合には、手術をお勧めすることもある。子宮脱を放置しておくと、膣から雑菌が入り、膣炎や子宮頚管炎、骨盤腹膜炎などをおこしやすい。子宮脱の手術は膣からアプローチでできるので、心配せずに医師に相談しよう。

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