医師 宮沢あゆみのコラム「治療方法」
1. 機能性月経困難症
痛みの原因となる疾患が存在しない「機能性月経困難症」は、下腹痛、腰痛には鎮痛剤、頭痛には頭痛薬、吐気には制吐剤などを、症状に応じて処方する対症療法が基本である。
鎮痛剤としては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)がよく用いられる。痛みの原因には、月経前から月経中にかけて子宮内膜のなかで分泌されるプロスタグランディンという物質が関与している。これらの薬剤はプロスタグランディンの分泌を抑えることで効果を現わす。よって、月経が始まりかけたら早めに服用するのが理にかなっていて効果的だ。
”婦人科三大処方”といわれる加味逍遥散(かみしょうようさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)などの漢方薬を、症状や体質に合わせて処方することもある。
なお、患部を温めるだけでも痛みは和らぐ。ぬるめのお風呂に長めにつかったり、ホカロンを下着の上に貼るのもお勧めである。
2. 器質性月経困難症
痛みの原因となる疾患が存在する「器質性月経困難症」は、原因となっている子宮筋腫や子宮内膜症などの治療をするのが基本だが、軽症の場合には対症療法で様子をみることも多い。
鎮痛剤が効かない場合、月経そのものを止める方法(偽閉経療法)をとることもあるが、最近は低用量ピルを用いることが多い。
低用量ピルを服用すると、排卵が抑制されるためホルモン分泌の波がおだやかになり、月経量が減る。子宮内膜が委縮することでプロスタグランディンの分泌も減少し、月経痛も顕著に和らぐ。
月経のたびに救急車で病院に担ぎ込まれるほど痛みが強い人には、低用量ピルがお勧めである。