医師 宮沢あゆみのコラム「症状の特徴」
症状は、筋腫のできる位置によってかなり異なる。
1.漿膜下筋腫
腹腔内には十分なスペースがあるので、子宮の外側に張り出す「漿膜下筋腫」は大きくなるまで症状が出ないことが多い。
前方へ張り出す漿膜下筋腫が大きくなると、膀胱を圧迫して頻繁に尿意を感じたり、尿が出にくくなったりする。
後方へ張り出す漿膜下筋腫が大きくなると、直腸を圧迫して便が細くなったり、便秘がちになったり、腰痛が出現したりする。
ウエスト周りが太くなって、ようやく筋腫の存在に気づく人もいる。
中年太りだろうとタカをくくっていたら、巨大な筋腫が見つかったという人も多いので要注意である。
2.筋層内筋腫
子宮の平滑筋の中にできる「筋層内筋腫」は、最も発生頻度が高い。
小さな筋腫が次第に大きくなり、近傍の筋腫と合体して、大きな塊に成長していくことも多く、月経痛や過多月経をおこしやすいのが特徴だ。
筋層内筋腫が子宮内腔に向けて張り出し、内腔をふさいでしまうと、不妊の原因となることもある。
3.粘膜下筋腫
子宮腔内に向けて発育する「粘膜下筋腫」は、小さくてもトラブルをおこしがちである。
筋腫は血流が豊富なので、月経時に子宮内膜が剥がれ落ちる際に内膜に接する筋腫から出血が始まると、ダラダラと容易に止まらなくなる。粘膜下筋腫は子宮内膜の修復を物理的にも妨害するため、過多月経、過長月経の原因となるのである。
日頃、貧血に悩まされている女性は、粘膜下筋腫を疑ってみる必要があるだろう。
妊娠を望んでいる場合、粘膜下筋腫は小さくても不妊の原因となりうる。
子宮内装避妊具(IUD)は子宮腔内に異物を挿入することで受精卵の着床を阻害するしくみだが、子宮腔内に突き出る粘膜下筋腫は、まさに、その異物の役割を果たすからだ。
粘膜下筋腫があって子供に恵まれない場合には、早めに手術で除去した方がいいだろう。小さな粘膜下筋腫なら、子宮鏡を使って膣からアプローチして切除することも可能だ。