医師 宮沢あゆみのコラム「子宮内膜症とは?」
子宮内膜症とは、本来は子宮の内側にあって月経のたびに体外へ流れ出るはずの内膜組織が、何らかの原因で子宮以外の場所に紛れ込んで増殖する疾患である。
月経周期に合わせて、転移した場所で増殖と剥離(はがれること)を繰り返して出血するが、血液を体外に排出できないため、その場に貯留した血液が臓器や組織の癒着を引きおこして、痛みの原因となる。加齢とともに症状が悪化することが多く、いったん発症すると閉経までつき合わなければならない厄介な疾患だ。
転移しやすい場所は、卵巣や卵管、子宮と直腸の間(ダグラス窩)などだ。腹膜に転移すると青紫色の小さな斑点が散在するので、ブルーベリースポットと呼ばれる。時には子宮から遠く離れた肺などに転移して、月経のたびに喀血することもある。
子宮内膜が卵巣に転移すると、毎月、出血を繰り返すうちに、溜まった血液が嚢胞(のうほう)を形成するようになる。古くなった血液が溶けたチョコレートのように濃縮してみえることから、これをチョコレート嚢胞という。
子宮内膜がダグラス窩や腹膜に移転すると、周囲の臓器同士が癒着しやすくなる。これが悪化すると骨盤内臓器が一塊(一つの固まり)となって、動きが極端に悪くなる。これを凍結骨盤(frozen pelvis)と呼ぶ。
子宮内膜症が子宮外のさまざまな場所で内膜組織が増殖するのに対して、内膜組織が子宮の筋肉組織のなかで増殖する場合もある。子宮内膜が子宮の筋肉組織に潜り込んだ場合には、出血した内膜組織が筋肉組織に吸収されて増殖し、硬く厚みを増して子宮全体が腫れてくる。これを子宮腺筋症という。
子宮内膜症の最大の症状は月経時の強い痛みで、月経時以外でも約7割の人が痛みを感じているという報告もある。腹痛、腰痛のほかに、排便痛、性交痛などを訴える人も多い。