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医師「宮沢あゆみ」による病気の話。「抗生物質に要注意 <膣カンジダ>」

医師 宮沢あゆみのコラム「抗生物質に要注意 <膣カンジダ>」

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<症例2>
32歳の独身女性が、予約なしに飛び込んできた。

「外陰部がかゆくてムズムズして、仕事にならないんです」
「分泌物が増えませんでしたか?」
「白っぽくてポロポロとしたおりものが出てきます」

「最近、性交渉はありましたか?」
「彼氏と別れて、ここ1年くらい性交渉はありません」

「最近、風邪をひいたり、抗生物質を服用したりしませんでしたか?」
「風邪はひいていませんが、先週、歯科で親知らずを抜いたので、3日間ほど抗生剤をもらって服用していました」

「抗生剤を服用したせいで、膣カンジダになったんだと思いますよ」

 
診察台に上がってもらうと、外陰部が真っ赤に腫れあがり、ところどころ、皮膚がずり剥けている。

「かゆくて、相当、かきむしってしまったようですね」
「夜もかゆくて眠れず、思い切り引っかいてしまったんです。そうしたら、今度は痛みまで加わって、踏んだり蹴ったりです」
「引っかいたことで、二次的に皮膚炎を起こしてしまったのですよ。外陰部の皮膚は柔らかいですから、爪で引っかいたりしたらダメですよ」

 
膣分泌物検査の結果、やはりカンジダが陽性だった。

「膣カンジダはカンジダ・アルビカンスという名前の真菌にかかることによって発症し、患部にかゆみをもたらします。女性のかゆみの原因のほとんどが膣カンジダといっても過言ではないくらいなんですよ」

「真菌って、何ですか?」
「聞き慣れない言葉でしょうが、ひらたく言えばカビのことです。水虫の親戚だと思ってください。水虫はスリッパなどの接触によって感染して、患部がかゆくなりますよね。膣にもカビが繁殖すればかゆみがでてくるのです」

「膣カンジダは性感染症なのですか」
「広義で性感染症に含めることもありますが、膣カンジダは性交渉とは関係なく感染することがあるんですよ」

「普通に生活していても感染するのですか?」
「そうです。空中にいるカビですから」
「へェ」

 
私は、彼女にカンジダの治療薬である膣錠と併せて、外陰部に塗る軟膏を処方した。

「外陰部が皮膚炎をおこしているので、まず炎症をとる軟膏を先にお出しします。お風呂あがりに清潔な手で外陰部に塗ってください。まずは皮膚の回復を待ちましょう。そのためにも、通気性の良い下着を身につけるようにしてください。皮膚を圧迫するガードルやスパッツ、おりものシートなどは極力避けてください」

「エッ、おりものが多いのに、おりものシートも使ってはいけないのですか?」
「おりものシートには防水機能がありますから、蒸れやすいのです。長くつけていると雑菌が繁殖しやすい環境になりますので、通気性のよい下着をこまめに取り替えた方がいいのですよ」
「それは知りませんでした」

「あなたの場合は皮膚炎をおこしていますから、寝ている間だけでもパンツをはかない方が早く治ります。炎症をおこした外陰部は空気にさらしておいた方がいいのです」
「目から鱗です」

「エヘン、これを“ノーパン療法”といいます。私が名付けた治療法です。昼間にノーパンという訳にはいかないでしょうから、せめて寝ている間だけでもノーパン療法に取り組んでください。3日くらい続けると、皮膚は見違えるほど回復しますよ」
「わかりました、やってみます」

 
1週間後、彼女は来院した。
「先生、ノーパン療法は劇的に効きました。おっしゃったとおり、ノーパンにして3日後には、皮膚の炎症がおさまり、痛みも引きました。膣錠を使ったら、かゆみもおさまり、おりものも減りました」
「それは良かった!」

こうしてノーパン信者が一人増えたのであった。

 
人間の皮膚のpH値の平均は5.2で弱酸性である。一方、膣内のpH値は3.5~4.2で皮膚より酸性に傾いている。その理由は、膣に自浄作用があるからだ。

膣内に生息する常在菌のなかにはデーデルライン桿菌(かんきん)という善玉菌がいる。デーデルライン桿菌は、膣粘膜の上皮細胞に含まれるグリコーゲンを乳酸に分解して、膣内のpHを酸性に保っている。この酸性の皮脂膜(酸外套と呼ばれる)が、カンジダなどの病原菌の侵入を防ぐバリア機能を果たしているのである。

ところが、糖尿病などの基礎疾患をもっていたり、風邪をひいて免疫抵抗力が低下していたり、不用意に抗生物質を服用すると、この善玉菌が死滅してしまい、カンジダが勢いを増して、かゆみの原因となる。

この症例では、歯科でもらった抗生剤が原因で膣カンジダになった可能性が高いが、抜歯以外でも、膀胱炎の治療のために抗生剤をほんの数日間、服用しただけでカンジダになった人もいる。カンジダにかかりやすい人は、抗生物質はなるべく服用しないようにした方が無難である。

このほかに膣の自浄作用が損なわれる原因として、アルカリ性石鹸の使用や、洗浄の際のこすり過ぎ、通気性の悪い下着の着用などが挙げられる。

市販の石鹸はpH9.5~10前後のアルカリ性が多いので、入浴時には皮膚のpHに近い弱酸性の洗浄剤を使って、洗顔時のように洗浄剤をネットで泡立てて、外陰部を泡でくるむようにやさしく洗うといいだろう。ゴシゴシこすり過ぎると天然の保護層である皮脂膜が損なわれて乾燥が進み、バリア機能が失われて感染をおこしやすくなる。

通気性の悪い下着やおりものシートの常用も、蒸れてかゆみの原因となったり、雑菌の繁殖を招きやすいので避けるようにしよう。

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