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医師「宮沢あゆみ」による病気の話。「HRTのメリット・デメリット」

医師 宮沢あゆみのコラム「HRTのメリット・デメリット」

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ホルモン補充療法(Hormone replacement therapy=HRT)に対して、「何となく不安だ」「怖い」という先入観をもっている方がいる。理由を尋ねると明確には答えられないが、漠然と、「がんになりやすいのではないか?」などと曖昧な知識をもとに不安を感じているのである。

ホルモン治療に対する正しい知識を身につけていただくためにも、医師は正しい知識の普及に努め、きちんとした情報を開示し、誤った風評は正していかなければならない。しかしながら、HRTに限らず、あらゆる薬には必ずメリットとデメリットの両面が存在する。メリットだけという薬はない。だからこそ、治療法の選択には慎重を期し、薬は投与することのメリットが、デメリットを上回ると判断された場合にのみ使用されるべきなのである。

HRTは更年期障害を緩和する有効な治療法だが、誰にでも受けられるものではないことを知っておいていただきたい。まず、HRTを受けられない禁忌症例、慎重な経過観察のもとに投与が可能な症例について解説しておこう。

 
HRTのデメリット
<禁忌症例>

乳がんとその既往
HRTは長期投与した場合に乳がんのリスクがあるからだ。

子宮体がん
エストロゲン依存性の悪性腫瘍がある人には投与できない。
HRTによって病態が悪化する可能性があるからだ。

原因不明の不正性器出血
同様の理由から、子宮由来の悪性腫瘍の可能性が疑われる人には投与できない。

急性血栓性静脈炎、血栓塞栓症とその既往

HRTの副作用に血栓症のリスクがあるからだ。

冠動脈疾患や脳卒中の既往
同様の理由から、冠動脈や脳動脈に既往症のある人には投与できない。

重度の肝臓疾患
薬は肝臓で代謝されるため、肝臓機能をさらに悪化させる可能性があるからだ。

 
<慎重な投与が必要な症例>

子宮体がんの既往
卵巣がんの既往
子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症の既往
コントロール不能な高血圧や糖尿病
重度の家族性高トリグリセリド血症
血栓症のリスクを有する症例
慢性肝疾患
胆嚢炎および胆石症の既往
偏頭痛、てんかん、急性ポルフィリン血症
肥満者、60歳以上の新規投与

なお、HRTを閉経前の女性に投与するのは慎重にしなければならない。まず、血液中の女性ホルモンの濃度を調べてみることが先決である。エストロゲンの分泌が著しく減少し、FSH、LHといった性腺刺激ホルモンの分泌が高値であれば問題はないが、エストロゲンの分泌がまだ十分あるところに不用意に投与すれば、更なる不快感をもたらすことになりかねないからだ。

  
HRTのメリット
次に、HRTのメリットを考えてみよう。
ほてり、発汗などの更年期特有の諸症状を緩和する、脂質代謝を改善し、血圧を調整することで、コレステロール値や血圧の上昇を抑え、動脈硬化や心筋梗塞など心臓血管系の疾患を予防する、骨粗鬆症による骨折のリスクを回避ことで老後の生活の質(Quality of life=QOL)を高める点などが挙げられる。アルツハイマー型の認知症に効果があるという報告もある。

HRTは適切に用いれば、心身が若返り、肌はみずみずしさと張りを取り戻し、膣にも潤いが戻って性交渉もうまくいくようになる。アンチエイジングという観点からも、不老長寿の「夢の治療」といわれる所以である。

HRTを受けるか否かを考える時に、生活の質(QOL)という考え方はとても重要な意味をもつ。乳がんなどに対するリスクと更年期や老後の生活の質に対するベネフィットをはかりにかけて、人生の価値をどこに見出すのか、医師に助言を求めながら、不安な点は納得がいくまで質問して、積極的に治療に参加していただきたい。

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