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医師「宮沢あゆみ」による病気の話。「パニック障害」

医師 宮沢あゆみのコラム「パニック障害」

更年期によくみられる症例のなかで、誰でも一度は耳にしたことがある比較的なじみの深い疾患に「パニック障害」がある。発症の「原因」を見極めるのは非常に難しいため、誤った診断を下されることも多い、更年期の代表的な疾患の1つである。

<症例6>
仕事でミスをして上司に叱られた。帰りの電車の中で、突然、胸が苦しくなり、心臓がバクバクして呼吸困難に陥ったため、途中下車した。急いで病院へ駆け込んだが、血液検査や心電図検査で異常はみられず、そのまま帰された。
しかし、その後も電車に乗ると、いいようもない不安感に襲われ、激しい動悸と息苦しさに、このまま死んでしまうのではないかと思うこともある。先日はエレベーターに乗ったとたんに同様の症状に襲われた。
最近は、いつ発作がおきるかと思うと、ひとりで外出するのが怖い。

 
「パニック発作」と呼ばれる、強い不安感や恐怖感を伴う、突然の激しい動悸や息苦しさに繰り返し襲われる病気を「パニック障害」という。多くの人は急性の心臓発作などを疑って、慌てて病院へ駆け込むが、病院に着く頃には症状はおさまっていて、検査をしても原因となる身体疾患がみつからないのが特徴である。

「パニック障害」は、脳内ホルモンであるノルアドレナリンとセロトニンのバランスが崩れるためにおきると考えられているが、詳しいことはわかっていない。日常生活のストレスや過労、睡眠不足などが発作の誘因となることが知られている。

「予期不安」(また発作がおこるのではないかという不安)から、次第にひとりで外出したり、電車やエレベーターなどの閉鎖空間に身を置くことが困難になり、人が集まる場所を避けるようになる。これを「広場恐怖(外出恐怖)」という。

「パニック発作」「予期不安」「広場恐怖」をパニック障害の3大症状という。これらの症状が悪化すると、やがて人前に出られなくなり、家に閉じこもりがちになって正常な社会生活が送れなくなる。「うつ病」を併発することも多いので注意が必要である。

パニック障害の診断は、繰り返すパニック発作と予期不安があるのに、原因となる身体疾患がないことが決め手となる。よって、まず身体疾患を除外するために血液検査、心電図検査などの内科的な諸検査を行ない、心臓血管系の疾患や呼吸器疾患、内分泌疾患などの可能性を除外する必要がある。

パニック発作と似た症状をおこす病気としては、過換気症候群、甲状腺機能亢進症、てんかんなどがあるので、これらの病気との鑑別は必須である。パニック障害と診断されたら、受診すべきは心療内科である。 
 
パニック障害の治療法には、薬物療法と認知行動療法がある。薬物療法は、抗不安薬や抗うつ薬を使ってパニック発作がおこらなくなるまで治療を行なう。認知行動療法とは、誤った行動習慣を修正して、正しい行動習慣を身につけさせる治療法である。

薬物療法の効果が現われて不安感が軽快した段階で、少しずつ外出したり、乗り物に乗ったりして日常生活に慣らしていき、少々の動悸を、「発作の前触れではないか」などとネガティブに解釈(認知)する思考法を直していく。この段階では、外出に付き添うなど、家族のサポートが治癒に向けた大きな力となる。

「パニック障害」は更年期に発症することが非常に多い病気である。くれぐれも「引きこもり」だの「なまけ病」などと誤解しないでいただきたい。治療には長い年月がかかるため、家族がこの病気のことを理解して、しっかりと支えてあげることが大切だ。

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