医師 宮沢あゆみのコラム「ストレスの原因を突き止めよう」
更年期の諸症状は、主としてエストロゲンの減少によっておこるため、論理的には失われたホルモンを補充すれば症状は緩和されるはずである。
ところが、そう一筋縄ではいかないのが人間の複雑なところだ。
更年期は、子供の巣立ち、夫の定年、両親の介護など、一生のうちで精神的、環境的にさまざまな変化に見舞われる時期と重なる。
「空の巣症候群」「濡れ落ち葉」「熟年離婚」などという言葉を引き合いに出すまでもなく、この時期に、これまでの人生をいかに生きてきたかという通知表を突きつけられた気分になる女性も多いのではないだろうか?
子供が巣立つことによって、子供べったりだった女性は、今後自分自身がどう生きていくかという問題に直面せざるをえなくなるだろう。
夫が定年を迎えて毎日家にいるようになれば、もはや「亭主元気で留守がいい」などとも言っていられず、これからの人生を夫と向き合って生きていかなければならない。そこに両親の介護などが重なればストレスは倍増するだろう。
環境の変化は、強いストレスを生み、ストレスが高じれば、イライラや不眠、うつ病に移行することもある。
こうした精神的、環境的な要素が背景にあって不眠や憂うつ感を訴える人に、ホルモン剤を投与しても根本的な解決にはならない。
だからこそ、更年期の女性の話は腰を落ち着けてじっくりと聞き、何が症状の原因になっているのかを突き止め、どうしたらその症状を軽減できるのかを、個別、具体的に考えていかなければならないのである。
次回から、更年期によくみられる症例を提示して、その解決策を具体的に考えてみることにしよう。
- 更年期は作戦タイムの時期
- 更年期って何?
- 女性ホルモンの乱れ
- 加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)
- 脳内ホルモンの乱れ
- 自律神経の失調
- ストレスの原因を突き止めよう
- 空の巣症候群
- 濡れ落ち葉対策
- 両親の介護問題
- 心身症
- 仮面うつ病
- パニック障害
- エストロゲンは働き者
- 更年期高血圧
- 高脂血症
- 糖尿病
- メタボリックシンドローム
- 骨粗鬆症・メカニズム編
- 骨粗鬆症・食事編
- 骨粗鬆症・運動編
- ロコモティブシンドローム
- エストロゲン欠落症状と間違われやすい疾患
- 更年期治療のさまざまな選択肢
- ホルモン補充療法(HRT)
- HRTのメリット・デメリット
- HRTの投与方法
- 更年期外来の診療とは?
- 更年期外来へようこそ!
- 更年期障害について医学解説
- 更年期と似た症状にご用心! 40代からの女性の病気